換気の目的、自然換気と機械換気について

空気汚染の原因とは?

建築物内の室内空気汚染は、人体に起因するCO2や体臭のほか、人間の生活行為や室内にある様々なものによって必然的に汚れてしまう。主な汚染原因として、床や着衣、布団、ペットからの粉塵、ガスコンロやストーブなどの燃焼機器からの有毒ガス、喫煙などがあげられる。また、近年ではシックハウス症候群の原因とされる建築材料や有機溶剤、防虫剤等から発生するホルムアルデヒドやトルエンなどの有機化合物も新たな空気汚染物質として注目されている。
室内空気汚染物質は、粒子状汚染物質(ハウスダスト、細菌類、アスベスト等)とガス状汚染物質(CO、CO等)に分類され、その種類と発生原因から、多岐にわたる健康影響について懸念されている。

対策方法

居室内の環境衛生状態を良好に保つためには、室外から新鮮な空気を取り入れ、汚染された空気を外部に排出させる必要がある。これを換気といい、大きくわけてその方法は、自然換気と機械換気に分類される。

自然換気とは何か?

自然換気は、風による室内外の圧力差を利用した風力換気と、室内外の温度差による空気の密度の違い、すなわち浮力を利用して換気する重力換気とがある。風力換気の計算に用いられる風圧係数は、建物の風上側、風下側、壁側によって差が生じ、風による換気力は、空気自体のもつ運動エネルギーと風圧係数を乗ずることで求めることができる。また、温度差による重力換気の換気力は、室内外空気の密度差に重力加速度と給気口と排気口の高さの差を乗ずることで求めることができる。

以上をふまえ、自然換気には、必要な換気量を計算し、居室内に適切な大きさの開口部を設けなければならない。もちろん、居室の種類や室内の汚染具合により、必要な換気量の条件が変わる点に留意し、建築基準法等の法令にも適合させなければならない。また、自然換気には、建物外部の風速や室内外の温度差など、不確定要素に依存する部分が多いため、常に必要な換気量を得られない点に留意が必要である。

機械換気とは

確実に一定の換気量を得るためには、送風機や排風機もしくは空気調和機などの機械的な設備を居室に設置して、換気量を保つ必要がある。

更に、居室の種類や作業目的、その他諸条件等を考慮し、機械換気設備の設置方法を検討する必要がある。代表的な機械式換気システムの構成は、給気口および排気口の両方とも機械式である場合と、そのどちらかが機械式で、もう一方が自然換気をとるハイブリッド型の換気方法である。

上記のうち、給排気とも機械式である第一種換気設備については、給気量と排気量の調整により、居室内圧力を自由に設定できるため、駐車場やボイラ室、電気室または工場、作業場などの様々な用途の室に対応する換気量を確保することができる。

給気が機械、排気が自然換気の第二種換気設備は、室内を正圧に保つことができ、室の清浄度が確保できるため、手術室等に適している。給気が自然、排気が機械換気の第三種換気設備は、室内が負圧に保たれるので、便所、厨房、浴室等で発生する汚染された空気が周囲の室に流出させないようにするための換気システムである。

以上、機械換気には多種多様な室に、計画的に換気量を設定できるメリットがあるが、換気の原動力を電力に頼ることになる。
一方で、自然換気は省エネルギー化に適していると言え、それぞれの特性を活かしながら、自然換気と機械換気の適切な併用を検討し、地球環境や自然に配慮した設計をすることが重要である。

気になるところ

普段生活をしているうえでの目線では、換気による冬季での給気の冷気感が不満である。第一種換気においても給気口の位置と給気量から起こる事がありえる。これを防ぐには、給気グリル1個当たりの給気量を少なくするか、給気される気流の下降を防止し、冷気流の拡散が素早く行われる給気グリルを用いることで解決する必要がある。

まとめ

設計上では、換気回数0.5回/hの換気量が確保されているものの、本当に必要換気量が確保されているかどうかについて、建物設備の維持管理にふくめて良く確認する必要がある。さらに換気設備が発する騒音についても考慮すべきであり、低騒音型のパイプファンを選択するべきであるものの、騒音を発さない程度に微弱運転をすることで、換気性能もダウンすることも考慮しなくてはならない。そして、換気設備のメンテナンスが容易におこなえる箇所に設置することも重要である。

これらを総合的に勘案して換気計画の方法について計画し、空気中の汚染物質対策としたい。

投稿者プロフィール

松本優
松本優
投資用収益物件を専門に管理するプロパティマネジメント会社や分譲マンション管理会社に勤務後、マンション管理士として独立。管理会社在職中にマンション維持修繕技術者ほか関係資格の取得し、その後、建築物環境衛生管理技術者を取得。
久松R&M株式会社 代表取締役、有限会社 久松商事 取締役。